第9章
会社を経営する上で
大切にしてきたこと
いろんな問題があると思うんですけど、そういうことも含めて、社員とすべて共有するということですね。ナカノオートの目的は、社員と社員の家族、経営者と経営者の家族を継続的に幸せにする、経済的に豊かにする、というところにあります。きっと社員の側も、うちの会社は社員のことをきちんと心配してくれていると思ってくれているでしょう。
入社してくる社員がみな積極的に動ける人じゃない、個性や環境でいろいろ違いますからね。入ってきたときに5段階評価で2の子が3になって、翌年には4になる。そんな会社の雰囲気作りが大事だと思います。社員とコミュニケーションを取ることは常に意識していますね。
僕が社長だったときは、工場にも行って社員の肩たたいて「おう、調子はどうだ」とやったりしてました。あと、これだけは絶対やると決めて続けてきたのは、毎年の忘年会です。昨日入ってきた社員の子も含めて、全員にお酌するんです。「頼むな、よろしくな」とね。昔僕がいた会社の社長がそういう人でね。それで僕も、これだけは絶対やろうと思って、まねするようになりました。
社員は社長にそうやられるとうれしいと思いますよ。僕はわりとそういうのが演技じゃなくて普通にできる人間なんだよね。作為的に社員に点数稼ぎしようというのじゃなくて、普通にできちゃうんだね。例えば今のトラックの店長とは、1カ月に3回くらい飲みに行って、酒を注ぎながら、僕はこう思うんだよ、と話し合うんですよ。
人の使い方はいろんな方法があると思いますが、従業員と社長の信頼関係というのは絶対に必要だと思います。それがうまくいかないのは、怠慢なんじゃないでしょうか。できる限りしてあげられる、余裕のある会社でありたいですね。
経済的な話では、社員に年金のことはよく言いました。年金は絶対あてにならないんだぞ、と。自主自立の気持ちを持ってやっていこうよ、とね。うちの平均年齢は30そこそこじゃないかな。だから、年金をもらえるまでまだまだあります。この時間をどういうふうに使うかが大切になってきます。ニュースで、最低でも老後に2000万円必要だから、貯金しないといけないというのがありましたよね。となると、そのための収入を得なければならない。これから先、水素自動車や電気自動車なんかが増えていって、自動車業界も変わっていって、整備が減っていくと思うんですよ。そうなったときに、どうやったら老後2000万円ためられるか。そうするためには、きちんと給料を上げてボーナスを渡す。それを、経営者が言った上でやってあげるというのが、一番いいと思います。有言実行ですね。
これから整備の需要が増えるということは絶対にないですから、それに対してどうしようというのを考えるのが経営者で、それを実行するのが社員です。そこには両者の信頼関係が絶対に必要なんです。これから車検制度がどうなるかわかりませんけど、何かひとつ違えばがたがたーっとなりますからね。
今取締役が全部で7人いますが、僕が退任するときにしっかりと、「会社というものはこういうものだ、1人で勝手にするな。最終的な決断は社長がやるが、みなで相談してやった方がいい考え方ができると思う」と、相当話をしましたね。それを彼らはみなわかってくれて、それぞれ頑張ってくれています。
うちは毎年事業計画というのを作るんですが、上から下に命令するのではないんです。昨対は下回らないというルールで事業部長が目標数字を出してくれるんです。その資料を基に、年の初めに経営会議をやって、達成するためにどういうことをするかというアイデアを出し合って、何を実践していくか考える。それがうまくいっています。やっぱり事業部長と配下の人間が自分たちで考えて動かないと、いいことにはなりませんから。
僕が社長を辞めて6年、業績が落ちるということはなかったです。普通、創業者が辞めると落ちるもんなんですけどね。僕が落ちないように仕組みを作ったのもあるんですけど、よかったです。
業績というのは怖いんですよ。すべての結果ですから。落ちていくなら、その原因があるんです。そして、原因に気づいたときには遅いことがある。そこに注視して、そうなる前に手を打つというのが大事なわけで、そのために全員が打てば響くような社員であればいいんです。問題点は、社長ならすぐわかります。それを社員に共有して、改善案を実行できる会社かどうか。経営者が社員といろんな部分で共有できないと駄目だと思いますね。
社長だけができあがっても駄目です。社員を鼓舞して、自分ごととしてみなでまとまっていく必要があります。